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#pmconf2023 協賛企画の舞台裏 〜生成AIによって広がるクリエイティブ制作の可能性

2023年11月、第8回目となる「プロダクトマネージャーカンファレンス 2023(以下、pmconf 2023)」が開催されました。プロダクトマネジメントに関わる人達が集うこの会にROUTE06も協賛しブースを出展。このnoteでは社内で行ったクリエイティブ制作のプロセスを辿ります。

1章:人とテーマの理解から始まるコンセプトづくり

企画の核として定めたのは、リーダーである松本の“らしさ”を表現することでした。

今回のpmconfのテーマは「その覚悟が世界を変える」。松本がこの言葉から着想した「少年のころから夢見ていたヒーロー像」を具現化することから始めました。修行して自身を高めていく、漫画に出てくるような様々なヒーロー。「個性」を活かしてストイックに物事に臨む彼らをモチーフに採用しました。

アイディアをブレストしたイメージボード。イラストレーター・ YUFO(@yufo616)さんの作品などが並ぶ

また、pmconfに協賛しているのは有名企業ばかり。ROUTE06の認知度は高くない中で、この場でただ社名のブースを出してもあまり印象に残らないことが予想されました。

来場者に意識してもらうための企画はどうあるべきかーー登壇者である松本とディスカッションを重ね、自社の強みや弱みを整理する過程で目を向けたのが、メンバーの個性です。

ROUTE06にいるPMたちは、それぞれバックグラウンドや得意領域を持っており、独自の強みを活かして業務に取り組んでいます。ROUTE06という会社に興味を持つためのフックとして、メンバーや役員、いわゆる「中の人」の「個性」を活用できないかと考えました。そこで、PMたちをキャラクター化するアイディアが生まれました。

2章:「ChatGPT」とクリエーターのコラボレーション

この時点でイベントまでは1ヶ月を切ったころ。作業効率を最大化させるため、『ChatGPT』を活用しながら制作を進めました。

ChatGPTへの依頼内容

キャラクター制作の手順は以下のように取り組みました。

1.社内における世界観・トンマナのすり合わせ
2.キャラクターモデルへのヒアリング設計
3.ヒアリング実行
4.キャラクターデザイン指示書の作成
5.キャラクターデザインラフ作成
6.キャラクターポーズの調整
7.キャラクターイラストの納品

この中でAIを活用したのは、2と4の段階で、ChatGPTには以下の生成を依頼しました。

  • キャラクター化のためのPMヒアリング項目の生成

  • キャラクターイメージの文章生成

ただし、ChatGPTの生成したものは、業務として外部に出すには不十分なクオリティです。生成された内容のクオリティを高めたり、調整したりといった作業は人力で取り組みました。

キャラクターイメージの文章生成

イラストレーターに発注する指示書を作成します。
モデルとなった人物へのヒアリング内容をまとめたドキュメントをChatGPTに読み込ませ、プロフィール文を作成するよう指示しました。

生成された文章は以下のようなテキストです。

プロフィール文:
最強の突破力を持つPdM。通った道はでこぼこで、中央突破が得意領域。彼の後ろには大きな軌跡ができます。常に楽しく、逆境を成長の機会と考えます。状況把握と最適解の提案が得意で、ピンチの際には必ず成功へ導きます。常にポジティブなアプローチで仕事に取り組みます。顧客の課題感を把握し、即座に改善案を提供することが得意。チームとの協力を大切にし、どんな状況でも前向きな姿勢で仲間と連携します。ゴールから逆算して計画を立てます。肩に大きめの使い魔、ニシアフリカトカゲモドキを載せています。力強い姿が特徴です。現場の人が実際に使えるプロダクトを作り込むことをモットーに、顧客の声を尊重し、プロダクトを改善し続けます。今後のプロジェクトやキャリアで追求する夢は、人々が変わるような大きなプロダクトを作り込むことです。

ChatGPTの出力結果を引用

ここから日本語の調整、外見の要素等を手直しし、イラストレーターに発注しました。

ラフへのフィードバックイメージ(※モザイクは編集部による処理)

指示書をもとに作成されたイラストラフへフィードバックを実施。抽象的になりやすい絵柄のタッチは、こちらが描いているイメージを固有名詞とともに伝えることを意識しました。加えて、意図や背景を補足しながら、世界観とキャラクターのイメージをすり合わせていきました。

イラストの完成

制作されたキャラクターの最終イメージ

完成したのがこちらのイラストです。モデルとなったPMたちの個性がイラストとして表現されました。

3章:「Figma」による診断コンテンツのプロトタイピング

pmconfでは、診断コンテンツを作成しました。

目的は、来場者やpmconf参加者にも体験して楽しんでもらうこと。診断コンテンツをどのように作るかを考えたとき、Figmaのプロトタイプを採用しました。

0からコーディングするよりも工数をかけず、普段の業務でもクライアントとともにFigmaでプロトタイプを組みながらコミュニケーションをすることも多く、クオリティの高いものを迅速に作れると判断したためです。

プロトタイプのFigmaボードイメージ

AIの手を借りた分岐設計

診断のための設問と回答はChatGPTを活用しています。
ヒーローたちの性格や特徴を学習させ、選択肢と導線を生成しました。
※DXクルセイダー、マーケットメイヴンはキャラクターの名前です

投げた質問文:
DXクルセイダー、マーケットメイヴンのそれぞれの回答がバラバラとなるようなPdMの診断テストの質問を一つ作成してください
ChatGPTによる回答:
質問:プロジェクトの成功を評価する際、次の要素からどれが最も重要だと考えますか?
A. デリバリーされた成果物の品質 B. プロジェクトが予定通りに完了したかどうか
C. 顧客とのコミュニケーションや期待値の調整 D. プロジェクトの進捗と関連するビジネス成果の達成

このあとの工程は人力です。テストプレイとフィードバックを重ね、ワーディングのチョイスや導線など、細かな調整を加えながら作成しました。

公開しての反応

Figmaの診断は、イベント前日に公開。診断結果が続々とXに投稿されていきました。

4章:スライドの世界観を補完するイラスト生成AI『Adobe Firefly』活用

登壇スライドにはイラスト生成AI『Adobe Firefly』を活用しています。

ヒーローを主軸に構築した世界観とスライドのデザインをあわせるのはマストでした。そこで、即座にイラスト生成ができ、商用利用もできる『Firefly』の活用を思いつきました。

『Firefly』は、日本語表記でプロンプト指示が可能であり、その手軽さも決め手のひとつでした。

ただし、イメージぴったりでイラストを生成できることは稀です。アタリをひくまでプロンプトを試行錯誤し続けると、無限に時間は溶けてゆきます。タイムオーバーを防ぐため、自分のなかでマスト要件と希望要件について線引し、マスト要件を通過した時点で生成作業を完了させると定めました。

case01:イメージイラスト

上のイラストは実際に生成したイラストを活用したものです。「ビジネスマン」や「協力する」といった内面的・抽象度の高い指示よりも「スーツを着た男性」「手をつなぐ」といった外見的特徴や動作を指示する方が希望したイメージに近いイラストが生成されました。

case02:事例紹介

西武渋谷に店を構える『CHOOSEBASE SHIBUYA』。実店舗でありながら商品ディスプレイの場としての役割を担う。ユーザーは手元のスマホでWebカタログにアクセスしWeb上で支払いを行う

こちらは事例として作成したスライドです。ヒーローのイラストにトンマナをあわせると、実店舗の写真よりもイラストを配置が馴染みがよかったため、生成にAIを活用しました。

上のイラストは、店舗内でスマホを使ってカタログを開いている様子を表現するために、「店内、手、スマホ、画面、カタログ」など名詞を羅列させて生成したものです。一度好みデザインが出たら、その世界観にあわせて構図違いでほしい情景を言語化し生成していきました。

おわりに

こうして3週間という限られた期間で取捨選択をしながら創り上げたクリエイティブたちは、当日のイベントでも注目を浴びました。

こういった機会をいただけたpmconfの運営のみなさんには感謝しかありません。
登壇のアーカイブもアップされていましたので、興味のある方は以下から視聴してみてください。