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Figma Japan カントリーマネージャー川延浩彰氏が語る、デザインの現在地 【Design Bazaar ショートレポート #01】

「Design Bazaar -デザインコラボレーション-」は、デザイン起点でのコラボレーションをテーマにしたオフラインイベントです。2023年10月24日に、東京・虎ノ門「THE CORE KITCHEN/SPACE」で開催されました。

マネジメント/エンジニア/プロダクトマネージャーとデザイナーのコラボレーションを軸に、世の中に価値を生み出すデザイン組織やプロダクト開発について探求した本イベント。

Session01では、スペシャルゲストとしてFigma Japan カントリーマネージャーの川延浩彰氏をお招きし、Figmaのプロダクト開発における取り組みについてお話しいただきました。この記事では、そのサマリーをお届けします。


Session1  『今求められるWIPアプローチ』


登壇者

Figma Japan 株式会社 カントリーマネージャー 
川延 浩彰氏

​下関市立大学経済学部卒業後、兼松エレクトロニクスに入社。その後、渡米を経て、カナダビクトリア大学でMBA(Entrepreneurship専攻)修了。帰国後、2011年3月からブライトコーブにてマーケティング、営業など様々な業務に携わり、日本のメディア事業統括並びに営業責任者を歴任、韓国事業GMを経て本社SVP兼代表取締役社長に就任。
2022年1月にFigmaのVision『すべての人がデザインにアクセスできるようにする』に強く共感し、Figmaの日本カントリーマネージャーに就任。愛知県出身、フットサルと旅行をこよなく愛する2児の父。

1.  Figmaについて

2012年に米国で創業し、2016年に製品をリリース、2017年にマネタイズを開始した「Figma」。2022年に日本進出し、英語以外の言語として初めて日本語の提供を開始しました。

FigmaのOfficial Community ”Friends of Figma”は、現在日本国内でも23の地域、領域まで拡大されており、米国に次ぐ二番目のマーケットとして積極的に展開されています。

・ Figma Platform とは

Figmaのミッションは「チームの視覚的なコラボレーションを支援する」、ビジョンは「全ての人がデザインにアクセスできるようにする」です。この思想に基づき、Figma Platformは設計されています。

Figma Platformの最大の特徴は、アイデア出しからデザイン、開発者へのコードの受け渡しまで、一気通貫で行えるプロダクト開発のプラットフォームであること、そして、インターネットにつながっているデバイスとブラウザーさえあれば、世界中のどこからでもアクセスし作業できることです。

「VUCAの時代」と呼ばれ、目まぐるしく変化していく現代においても、Figmaを使えばアジャイルで対応することができ、開発のスピードとサービスの質を向上することができます。

アイディア出しから開発まで一気通貫でサポートするFigma Platform

・ 事例紹介

世界中で使われているFigma。マッキンゼーのレポートによると、デザインセントリックな会社はそうでない会社に比べて、収益成長が32%も高くなると言われています。

川延氏は「日本で1社でも多くの会社がデザインセントリックになり、デザインから経営にインパクトを与えてほしい」と強調しました。

日本国内における事例として、Figmaによってデザインカルチャーをアップデートした株式会社ユーザベースの事例が紹介されました。

Figma利用前後のビフォーアフターの変化、そしてプロプラン、ビジネスプラン、エンタープライズプランと移行した背景については、以下の記事で読むことができます。

2. デザインの3つの変化

セッションの後半では、デザインに起こっている3つの変化について語られました。

・ デザインの変化(1) 
ピクセル作業から問題解決のためのデザインへ

「ツールチップの再発明をしないように」とは、Figma CPO(最高製品責任者)山下祐樹氏による考え方。

何かを新しく作ろうとするとき、誰かがすでに考え抜いたデザインがすでに存在している可能性があります。デザインシステムはデザインの再利用を可能にし、デザイナーは他の作業に集中できるようになったのです。

また、デザインの自動化も加速しています。Figma上のプラグイン、Design Lint(デザインリント) を使えば、FigmaのStyleという機能で定義した色や、文字のスタイルルールに外れたデザインを抽出・修正することができます。

自動化において欠かせないのは、AIの活用です。Figmaでは、デザインパターンやカラーパレット、ボタンのパターンなど、AIがデザインをサポートしてくれるアイディアを構想中とのこと。

(編集注:2023年11月8日、FigJam AIが新たにリリースされました)

そして、Figmaの存在を稀有なものにしているのは、そのコミュニティによってオープンソースに結集した知識を活用できることです。

Figma Communityでは世界中のFigmaユーザーが自分たちのアセットを公開しています。それらを活用することで、多くの人の作業時間を減らしたり、どうやってそのデザインが作られたのか分かり、みんなが学ぶ機会にもなっています。

このように、デザインシステム、自動化、オープンソースによって、ピクセル作業がどんどん少なくなり、デザイナーが問題を定義し解決する作業にもっと時間を使えるようになっています。

・  デザインの変化(2) 永遠の未完成

「人は、問題定義の前に、アイデアを思いつきます。先に解決策を思い着くのは良くないこととは分かっていますが、私たちは自分たちが思っている以上に、アイデアを先に思いついてしまう」と川延氏。

この非直線的なフローがリアルだとしたら、どのように対応すればよいのでしょうか。その問いに対して、「デザインは常にWIP(ワーク・イン・プログレス)=作業中のもの」と捉えることが肝だと語ります。

世界で急速にデジタル化が進むとともに、プロダクトの作成や反復作業も迅速に対応できるようになりました。それにより、顧客の反応を見ながら、継続的に反復することが可能です。

すぐにデザインを変えられるということが分かっているので、思いきってリスクを取ることができる。これが二番目に挙げられたデザインの変化です。

・  デザインの変化(3) デザインはみんなのもの

これまで、デザイナー、PM、エンジニアという3つ職種は、ハンドオフを通して繋がっていましたが、現在では、もっとオーバーラップしてお互いの仕事の領域やアプローチで助け合うようになっています。

「このような状況では、『私のデザイン』というような考えがなくなっていく」と川延氏は語ります。実際にFigmaでは、誰が何を担当したのか分からないことが多く、それはデザインのやり方がそうなっているからだそう。

デザインに対する姿勢そのものが変わってきており、全員がデザインに責任をもつようになっています。みんなをデザインに巻き込むことが、よりよいものづくりをする近道であることに疑いの余地はありません。

ヤフー株式会社(現LINEヤフー株式会社)の「モブデザイン」は、デザイナー以外のプロジェクト関係者もデザインプロセスに自然に巻き込むことで、短期間でサービスローンチに至った事例として紹介されました。

 ・質疑応答

FigJamを使った質疑応答には多くの質問が寄せられ、

  • 日本におけるコミュニティの状況

  • FigmaのAI機能

  • デザイナー以外をデザインプロセスに巻き込む方法

などのトピックで盛り上がりました。質疑応答の様子は、以下で紹介する動画に収録されています。

セッション動画のご案内

セッション動画をYouTubeでご覧いただけます。この記事では紹介しきれなかったFigmaの可能性とデザインの変化を、動画でお楽しみください。

Photo: 大竹宏明

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